ナーグ ダル湖(Nag Dal)
ヒマラヤ山脈の最南端にある、ダウラダル(Dhauladhar)山脈には、ガッディという土着の遊牧民たちが遊牧している。
標高2000m〜4000mのエリアを、数百頭の羊や山羊を連れて遊牧している。
ガッディの宗教はヒンドゥー教だが、彼らは特に敬虔なシヴァ派として知られている。また彼らはヒマラヤ山脈における他の民族と同様、蛇の神ナーガ(Nag Devta) も畏れ敬っている。
ダウラダル山脈には22の湖があると言われているが、その中でも特に神聖とされる湖が7つある。
・ラームダル(Lam Dal)
・ナーグダル(Nag Dal)
・カーリークンド(Kali Kund Dal)
・チャンドラクープ(Chander Koop Dal)
・ダムゴリダル(Dham Ghodi Dal)
・スックダル(Sukh Dal)
・ナーグチャットリダル(Naag Chatri Dal)
以下は、その中でもナーガの神の住処として神聖視されているナーグダルにまつわる、数個ある伝説のうちの一つである。
伝説
ナーグダル (Nag Dal 標高4350m)
今から約5000年前、ラジャスターン州にあるアルワール(Alwar)の国では干魃に困っていた。
アルワールの王国に雨を降らせるため、ヒマラヤ・ダウラダル山脈にある聖なる湖ナーグダルから水を持ってくるよう、司祭たちは国王バグスー(Bhagsu)に忠告。バグスー王は、湖を訪問した。
精神的な修行を完成させ神通力を身に付けていたバグスー王は、一人で旅し、2日後にはダウラダル山脈の中の、魔法の水が湧き出ている湖に到着していた。そしてそのときナーガの神はそこに居なかった。
バグスーは盗みように自らのポットにその水を全て入れ、満足しながら帰途についた。
自分の棲家に戻ったナーガの神は、水が全くなくなっていることに気付き、そしてすぐにそれがバグスーの仕業であると気付いた。
ナーガの神は木の下で休憩していたバグスーに追い付き、そして魔法の水が入ったポットを取り返そうとする。
しかしバグスーはそれに抵抗し、取り合いになったところ、ポットから水が全て地面に飛び散ってしまった。
悲しみにくれたバグスーが事情を全てナーガに話したところ、ナーガは
その苦境を理解し、すぐにアルワールに雨を降らせたのだった。
そして地面に飛び散ってしまった魔法の水であるが、そこから水が湧き始めた。
ナーガの神は告げた----これからこの場所は、人々から聖地として祀られるべき場所となる。バグスーの名前を取って、Bhagsu Nag(バグスー・ナーグ) という名で。
このダウラダル山脈の高地に位置するナーグダル湖は、現在何百人もの人々が聖水を求めて訪れる。また、そのふもとにあるバグスーナーグの寺院も巡礼の地となっている。