​ガッディ(Gaddi)

ガッディ(Gaddi)は、インド ヒマーチャルプラデーシュ州からカシミール地方の遊牧民族である。現在は路上などでも、数百頭の羊やヤギを連れて遊牧している姿が見られる。

出自

遊牧民ガッディの歴史は伝承しか残っていないようだが、大方インドの平野部から来た移民の子孫だろうといわれている。

  いわゆる王侯に属するチョウハン・ラージプート・ガッディ(Chauhans Rajputs Gaddies)と、司祭階級ブラフマン・ガッディ(Brahman Gaddies)は、

現ラジャスタンからバルモウルに移住したと考えられている。

その他のカーストに属するガッディ達のほとんどは、17世紀にムガール帝国の皇帝アウラングゼーブの迫害から逃れるために丘に逃げた人々の子孫であるとされる。

また王侯ラージプートに属するガッディの中には、宗教的迫害から逃れるべくラホール(パキスタン)からこの場所に移住した者たちもいる。

現在、人口の大部分はチャンバ地区のバルモールに住んでいるが、ジャンムー&カシミール地方や隣接するカングラ地区、マンディ地区にもこの部族は散在している。

彼らはピル・パンジャル山脈(Pir-Panjal)とダウラダル山脈(Dhauladhar)

の範囲の間を主に移動しているが、標高の高い地域であり降雪量が多いため、多くの月は断絶されている。

彼らの中で話されている言語は、バルモウリ・ガッディ(Bharmouri Gaddi)。

文字は、中世まではチャンバやカシミール地方で主に使用されていたタクリ文字(Takri)を使っていた。

現チャンバ地方にあったバルモウル王国はガッディが多く住んでいた国であったが、政治的役割や支配階層にガッディは入っていなかった。

アカシック
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古代, 文字
ヒマーチャル
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ガッディとその信仰

このダウラダル全域を拠点に移動する放牧民族ガッディは、シヴァ神を信仰する民族であることで有名である。

ガッディとシヴァの間のこのつながりは彼らの民間伝承や伝統に織り込まれ、この地域での彼らの仕事や生活にも現れている。

以下は彼らに伝わる、一つの伝説である。

 

ガッディの一族が避難所を求めてガッデラン(Ghaderan:ガッディの都=ブラモウル)に到着したとき、彼らはこれからの生活をシヴァに祈った。

生活の糧も何もなかったからだ。

 

シヴァはそれを聞き、ドラ(dora)=羊毛で作られた長いロープを送った。

そこから一族は、羊と山羊を扱っていくことが彼らのダルマ(一族の法)であると覚知し、それ以降羊飼いをやっているという。

しかし実は羊は、シヴァ派の人々にとって非常に重要でもある。

 

神話では、こう語られているー

女神ガウリ(Gauri:女神パールヴァテ​​ィの化身)はシヴァと結婚する前、彼の敬虔な地位を知らず結婚に熱心ではなかったという。

 

そこでシヴァが自らの結婚式に出席するのを止めようとして、彼女は雪の支配者ヒマラージ(Himraj) に雪を降らせるよう要請。

シバはしかし結婚式を延期させないために、羊の群れを創造すると、その羊たちは雪の中を通り抜けて道を作り、シヴァも結婚式へ参上することができた。

 

この神話から、シヴァ派を信仰する者にとって、羊を飼うことの役割は単なる職業ではないと言われている。

そして彼らの結婚式において一点特異な風習があるとすれば、新郎が通過する数多くの宗教儀式のうち、ジョグヌー(Jognoo)という儀式がある。

 

マニマヘーシュ湖を意図した水で身体を浄めた後、新郎はふんどし、ドラ(羊毛でできたロープ)、そして金ののイヤリングのみを纏い、物乞いをさせられる。

この時新郎は自分の意識から外れシヴァの意識に参入しており、そこから簡単に逃げ出す事もできるという。しかしそのように走り出そうとする新郎を姉妹や従兄弟達がつかみ、そして儀式の部屋に引き戻す、という伝統儀式が今でも行われている。

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聖なる​湖とガッディ

ダウラダル山脈には標高4000〜5000mの位置に多くの湖があるが、しかしそれらは以前はガッディにしか知られていなかった。

それらの湖を彼らは聖なる湖として敬い、近辺一帯カングラやチャンバー地方において重要である様々な蛇(Nag)信仰に結び付けられている。

一年のうち最大のシヴァの祭り・マハーシヴァラトリの日には、カングラ渓谷にいるガッディ達は男も女もいくつかの峠を越え、仲間達と合流しながら、チャンバー渓谷のマニマヘーシュ(宝珠のシヴァ)湖へ巡礼する。

 

シヴァは、標高5653mの頂点マニマヘーシュ・カイラース(Manimahesh Kailash)

に住むと言われている。マニマヘーシュ・カイラースは、その湖から仰ぐことができる。

しかしその他高地の湖・ナーグダル(Nag Dal)やラームダル(Ram Dal)など、各々の家には近いが霊的重要性には少し劣る、という巡礼もある。

 

 

それらの聖湖には年に度々訪れ、またそれらはシヴァへの巡礼とされてはいるが、しかしその奥には実はナーガの神がいる。ガッディの敬意の本当の受取人は、実はそれら湖に住まうとされている強力な蛇の神々である。ナーガの神の祝福なしに、何の冒険もできない、と彼らは言う。

中央から西部ヒマラヤの地域では、蛇信仰は基本的な宗教形式だと言える。

特にやはり西部ヒマラヤ、ヒマーチャルからカシミールにかけての領域である。

マンディ、シムラー、カングラからチャンバー、ジャンムー、カシミールまで、数々の聖なる湖において蛇の神々は、力を持っている。

 

 

クル渓谷ではナーラーヤン、シムラー地方ではリシ、そしてダウラダル高地においては単純にナーガと呼ばれる。

そしてその中でも最も重要な神は、インドゥル・ナーガ(Indur Nag) と呼ばれ、全天候を支配し、そしてナーグダル湖に住まうとされる。

聖地マニマヘーシュ・カイラース

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